2020.5.29
味噌ラボ

90年前の先駆者による味噌醸造技術書 (その1)

 みそ製造技術者養成講座で何年か前、諸先輩方のどなたかにお聞きしたのか失念してしまったのですが、若い人にも知ってもらうためにここで本を紹介をしたいと思います。
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー 蔵書「最新醤油味噌醸造法」栂野明二郎 著 醸造評論社 大正15年刊(1926年)がその本で、インターネットで検索して頂ければ閲覧することができます。

 現在の味噌醸造技術の基礎となっている全国味噌技術会の「味噌技術」が昭和28年から、「味噌科学」が昭和30年から刊行を始めたのにたいし、戦前の大正時代にすでにこれだけの技術が確立していたのは、今から見直してみても驚異的なできごとだと思います。製麹技術や大豆処理技術、温醸技術の基本のみならず、バクテリア利用として酵母の人工培養法まで解説されていますので、今回は酵母の項を紹介します。

第七節 味噌酵母の培養法 946ページから引用
一 味噌酵母添加の利益
 糖化作用によって出来た糖分の一部は、味噌中に繁殖した味噌酵母によって、酒精発酵を起こし、酒精と炭酸ガスを作り、この酒精は味噌中に出来た酸類と化合して種々の芳香を付与するのである。夏期を通過して完全に熟成した味噌には光沢と芳香があって味噌固有の風味を有するのはすなわち酵母の力である。然るに味噌は醤油諸味と異なり、半固形であって、酵母の繁殖には極めて不利益の状態にあるから味噌中に於いて酵母の繁殖することはすこぶる困難であるから、自然の状態に放任しておっては熟成も遅く品質も不良である。故に酵母を培養して、仕込の際添加すれば酵母の繁殖も容易であって熟成も早く品質も良好となるのである。

その2 へ続く

国立国会図書館 近代デジタルライブラリー より